【制作の舞台裏 第9回】AIに声を演じさせる ― 先に「秒」を割る
全121シーンのドラマで、声はいちばん最後に足すものだと思っていた。実際は逆だった。声を入れると決めた瞬間に、映像の作り方そのものが変わる。今回は、その順番を取り違えて起きた事故と、そこから決めたルールをお伝えする。
ナレーションとセリフが、同時に鳴った
2026年6月22日、カット「8-2-B」。ナレーションを0〜5秒に、登場人物のセリフを0〜6秒に置いていた。完成した動画を再生して、すぐに分かった。どちらも聞き取れない。
画面の中では何も破綻していない。絵はきれいで、口も動いている。音だけが潰れている。しかも作った本人は台本を知っているので、聞き取れてしまう——初見の人が聞き取れないことに気づけない。
同じカットで、もう1つやっていた。約4秒かかるセリフを、3秒のショットに入れていたのである。動画では、セリフが途中で切れる。
2つとも原因は同じだった。絵を先に決めて、あとから声を足そうとしたことである。声は「足す」ものではない。時間を奪うものだ。
決めたルール——先に「秒」を割る
ナレーションとセリフを、同じ時間帯に重ねない。必ず順番に置く。
12秒のカットなら、こう割る。前半6秒はセリフ、後半6秒はナレーション。同時に喋らせない。
00:00-00:06 セリフ/00:06-00:12 ナレーション
セリフのあるカットは、尺 ≧ セリフの長さ + 1〜2秒 を確保する。
セリフの長さは、文字数を5で割ればおおよそ出る(1秒あたり約5文字)。20文字のセリフなら4秒。そこに余白を足して、ショットは5〜6秒取る。「2〜5秒が目安」という一般論より、そのセリフが何秒かかるかが優先である。
そして、この2つは人間が目視で守るルールにしなかった。ショットの尺がセリフの長さ+1秒を下回っていたら、生成そのものを機械が止めるようにしている。数えれば分かることは、AIにも人にも聞かない——第4回でお伝えした考え方の、そのままの応用である。
ここまでが「声を入れる前に決めること」だ。実際に声を入れる段になると、もう1つ、絵の割り方を左右する制約が出てくる。
