制作の舞台裏
【制作の舞台裏 第10回】司令塔はExcel1枚だった
121シーンの制作を回していたのは、しゃれた管理ツールではなく、Excelのシート1枚である。行が1カット、列が「そのカットに必要なもの」。AIはこのシートを読んで作業し、結果をこのシートに書き戻す。今回は、その台帳の作り方をお伝えする。
なぜ専用ツールではなくExcelなのか
理由は3つある。
- AIが読み書きできる。指示文も、生成した結果も、同じ場所に置ける
- 人間が目で見られる。サムネイル画像をセルに貼っているので、スクロールするだけで「どこまで出来ているか」が絵で分かる
- 1枚に集まる。台帳が2つに分かれた瞬間、どちらが正しいか分からなくなる
列は、そのままAIへの発注書になっている。シーンの流れ、ナレーション、セリフ、動画生成AIへの指示文、尺(秒)、誰がいつ喋るかの割り、そして画像と動画それぞれの進捗。1行を見れば、そのカットに必要なものが全部そろっている。
いちばん効いたのは「終わったら即書く」だった
動画を保存したら、その場で進捗欄を「完成」に更新する。更新なしの完了報告は禁止。
地味だが、これがいちばん効いた。混乱の最大の原因は、失敗ではなく「終わったのに終わったと書いていないこと」だったからだ。
作業をAIに任せると、成果物は増えるのに台帳が追いつかない状態が起きる。ファイルはあるのに、シートは「作業中」のまま。次に見た人(または次に動くAI)は、それを未着手だと判断してもう一度作る。二重作業は、たいていここから生まれる。
だから私たちは、完了報告の条件に台帳の更新を含めた。ファイルを保存しただけでは終わりではない。台帳に書いて、初めて終わりである。
そして、この台帳は運用の途中で2回、派手に壊れた。どちらも「表計算ソフトの使い方」の話に見えて、実際は台帳の設計の話だった。
