【制作の舞台裏 第2回】AIを「7人のチーム」にして映像制作を回す
生成AIで連続ドラマを作るとき、いちばん効いた判断は「AIを1人の万能選手として使うのをやめたこと」だった。役割ごとに分け、それぞれに別の指示書を持たせる。いわば7人のチームにした。
結果として、全16章・121シーン・486本のカット動画を、社内の少人数で回し切ることができた。今回はその中身を、専門知識がなくても分かる形でお伝えする。
なぜ「1人に全部」だと崩れるのか
最初は1つのAIに全部を頼んでいた。脚本を書かせ、そのまま画像を作らせ、動画にして、音楽もつける。一見効率がよさそうに思える。
ところが、指示が長くなるほど品質が落ちた。「この場面の感情はこうで、登場人物の見た目はこうで、カメラはこう動いて、尺は何秒で……」と条件を積み上げると、どれか1つが必ず抜ける。しかもAIは抜けたことを申告しない。それらしい成果物を出してくる。
人間の仕事でも同じことが起きる。1人に企画・デザイン・原稿・校正を全部やらせれば、最後の校正は甘くなる。自分の書いた文章の誤りは見つけにくい。
7つに分けた——それぞれ別の「指示書」を持つ

そこで役割を分け、それぞれに専用の指示書(AIへの前提ルール)を持たせた。実際に運用している役割はこうなっている。
- 監督:全体の進行を見て、誰に何をやらせるかを決める
- 脚本:場面の内容・ナレーション・セリフを文章にする
- 画像:場面の開始と終了の絵を作る
- 動画:2枚の絵の間を動かして動画にする
- 音楽:場面に合うBGMを作る
- 検証:指示書が原作と食い違っていないかを点検する
- 整合性監視:服装・小道具・髪型が前後のカットでずれていないかを見る
重要なのは、作る人と点検する人を分けたことだ。同じAIに「作って、そして確認して」と頼むと、自分の出力を肯定する方向に働く。別の役割として立て、点検だけをさせると、指摘が出るようになる。
ちなみにこの7つは、その後1つ増えて8つになっている。制作を進めるうちに「進行管理(どのカットが完成し、どれが未着手かを台帳で管理する)」が独立した仕事だと分かったためだ。
分けたことで何が変わったか
いちばん大きかったのは、失敗の原因がすぐ分かるようになったことだ。
絵がおかしければ画像の役割、動きが不自然なら動画の役割、話がつながらないなら脚本の役割。1人に全部やらせていた頃は「なんとなく品質が低い」としか言えず、どこを直せばいいのか分からなかった。
