制作の舞台裏
【制作の舞台裏 第1回】AIだけで連続ドラマを作ってみた ― 全工程を自動化して分かったこと
「脚本も、映像も、音楽も、ナレーションも、ぜんぶAIで作れるのか」——答えは「作れた」だった。
一般社団法人AI活用推進機構は、短編連続ドラマ「空白を埋める者」を、ほぼ全工程を生成AIで制作した。全16章・121シーン。本編に使ったカット画像は677枚、カット動画は486本。BGMは9曲。撮影も、俳優も、スタジオもない。
この連載では、その制作過程で実際に分かったことを工程ごとに記録していく。うまくいった手順だけでなく、つまずいた箇所と、そこから決めたルールもそのまま公開する。
数字で見る制作の実態
まず、きれいな話ではない部分から書く。
- 採用したカット画像 677枚 / 不採用 1,652枚(不採用率71%)
- 採用したカット動画 486本 / 不採用 367本
- 記録した事故 13件(そこから運用ルールが生まれた)
採用1枚の裏に、2.4枚のボツがある。「AIに頼めば一発で出てくる」という話ではない。実際には、出しては直し、出しては直しの繰り返しだった。
それでも成立したのは、やり直しの1回が安く、速いからである。撮影ならスタジオを押さえ直す話が、ここでは数分で終わる。この一点が、これまで映像を持てなかった規模の組織にとって決定的に大きい。
いちばん効いた判断——AIを「1人」として使わない
制作を通していちばん効いたのは、技術の選定ではなかった。AIを1人の万能選手として使うのをやめ、役割ごとに分けたことである。
脚本、画像、動画、音楽、検証、整合性の監視、進行管理。それぞれに別の指示書を持たせ、担当を分けた。とくに「作る役割」と「点検する役割」を別にしたのが大きい。同じAIに「作って、確認して」と頼むと、自分の出力を肯定する方向に働くからだ。
詳しくは第2回で扱う。
いちばんつまずいたこと——AIは自信満々に間違える

登場人物の眼鏡が消える。髪型が変わって別人になる。前の場面になかった物が映り込む。どれも1枚ずつ見れば破綻していないので、並べて初めて気づく。
これはAIが指示に逆らったのではない。多くの場合、私たちの指示のほうに原因があった。詳しくは第3回で扱う。
